■感傷的なお題■

01.囁き一つ (島準)
02.傷痕に口づけを
03.色を変える眼差し (イザアス)
04.掌に浸透熱 (花藤)
05.君にしか触れない場所 (ハルアベ)
06.噛みしめた唇 (利準)
07.足枷も愛情
08.小さな爪
09.ココロもカラダも
10.その背に羽根が生えたなら

4月分は上記より、01・03・04・05・06を使用しました。


配布元は閉鎖されました。






01.囁き一つ


校門の傍に植えられた一本の櫻の樹は、
春の訪れを教えるようにその枝に折れんばかりの華を咲かす。

今年の開花はいつもより遅めなのか
四月に入ってやっと咲いたようだった。

三年が卒業していつもより人数が減ったグラウンドは、どこか寂しげだ。
そう思って、ふと自分が寂しいからだと思った。

大好きだった先輩たちはそれぞれの道を歩んでいった。
一週間もすれば新入生が入ってきて、また騒がしくなるんだろう。
そして、背中を支えてくれていたあの人のポジションにも新しい奴が入るのだ。


春は別れの季節とも言うし、寂しさはつきものなのかもしれない。


「準太っ!」

声のほうを振り向く。
あなたはもう制服姿ではないが、こうやって自分の名前を呼んでくれる。

「遅いッすよ、慎吾さん。」

あなたの名前を呼ぶのが好きだ。

「悪かったって、準太。」

あなたが俺の名前を呼ぶのが好きだ。
声も、唇も、表情、もすべて。

「しょうがないっすね。」

そうやって笑うと、

「好きだぜ、準太。」

俺を抱きしめて、囁いてくれる。
あなたのすべてが俺を幸せにしてくれる。
あなたが大好きだ。

「俺もっすよ。」

腕を背中に回しながら答えた。


春は別れの季節とも言うけど、
春は俺があなたと――慎吾さんと出会った季節。

今感じる寂しさよりも、

あなたと出会えたことを
あなたのすべてを

愛してる。










03.色を変える眼差し


シーツの海に沈むあいつの瞳を誰が想像できるだろう。

怪しく、麗しく、艶やかな。
その眼差しで見つめられると、理性なんてすぐに切れてしまいそうだった。

愛を確認する行為でもなければ、愛を育むものでもない。
ただの性欲処理に他ならないその行為に溺れてしまったのはどちらが先か。
気が付けば、躰はあいつを求める。
同じように、あいつも俺を求めてくる。

恥だとかそんなものはどこかに置き去りにして、獣のように互いを求め合う。

「・・・あっ・・、ん・・っ。」

吐息までも奪うように口付けて、口腔を貪る。
アスランの瞳は潤んで、熱を帯びていた。

『こい・・、よ・・・。』

唇の動きだけで告げられるそのコトバに誘われるように腰を勧める。
圧倒的な熱に、息を吐きながら眉を顰め耐えるアスランの姿はとても扇情的だ。


あとは、熱を開放するまで律動を繰り返すだけ。
欲望のままに、愛するままに。










04.掌に浸透熱


「疲れたぁ・・・。」

練習後の部室に、藤真の声が響く。
皆、練習を終えて帰ってしまった。
残ったのは、キャプテンであり監督である藤真と副キャプテンの花形だけだ。

活動日誌をつけて、来週の練習メニューを作成する。
毎日続けてきたことだが、やはり疲労はたまる。

「眠てー。」

そう言って、藤真は机に突っ伏した。
片手を花形のほうに伸ばして、もう片方は顔の下に。

春の暖かい陽射しがより眠気を誘う。
うとうとしているだけで、本当に眠ってしまいそうだった。

花形はそんな藤真をみながら微笑んで、伸ばした片手に自分の片手を重ねた。
その手に藤真が気付いたのか、軽く握ってから安心したようにもう一度眠った。

近々、新入部員が入ってくる。
また忙しくなるだろう。
こうやって休める時間も少なくなりそうだ。

「おやすみ。」

制服のブレザーを肩からかけてやり、花形は先ほどの位置に戻る。
そうやって、藤真の手を握りながら優しく見つめていた。
掌から感じる熱が幼くて、笑みが零れてしまう。


暫くして花形も、春の陽射しに誘われるように瞳を閉じた。



まだもう少し、焦らなくてもいいだろう。










05.君にしか触れない場所


例えば、誰かが俺とハイタッチをしたとしても、
例えば、誰かの肩を俺が叩いたとしても、
それはすべて、無意識に右手を使っているだろう。
意識的に変えるのはあいつだけ。
気が付いているかはわからないが、
少しだけあいつを特別扱いしている。

「おら、行くぞ。」

体中を痣だらけにして、
鬱陶しいくらい真っ直ぐに俺のことを見つめてくる。

「はいっ!」

だけど、気が付けばその視線でさえ今は心地よくなっていた。

生意気で、頑固で、偉そうで。
でも、憎めない。
自分でも相当バカだと思ってる。

中学に行っても、何だかんだいってあいつの話をしていた。
秋丸にも、呆れられてしまうくらい。

一時は、止めようかとさえ思った野球も今は昔ほどではないが楽しめている。
これもすべて、あいつのおかげなのかもしれない。
口にしてやるつもりはないが、少しは感謝してる。

だから、バレない程度に特別にお前だけ。










06.噛みしめた唇


「利央さんっ!」

四月になって、後輩が出来た。

「ブッ・・・、利央さんかよ。似合わねー。」
「何なんすかっ!準さんも同じでしょ。」

俺は後輩からさん呼びされるようになって、
準さんたちを呼び捨てにしていた先輩はいなくなった。

「いや、やっぱお前が呼ばれてると笑える。な、タケ?」
「そうそう。」
「な、タケさんまで酷いッすよ!」

去年の夏は早かった。
俺はベンチからサインを送るだけ。
声を出すことしかできなかった。

あんな思いはもうしたくない。
唇を噛みしめて、涙を堪える試合はもういらない。

「利央、やるぞ!」

託された場所は大きくて、まだまだ俺では不充分かもしれないけど。
少しでもあなたの支えになれたらいいと思う。

「はいっ!」

そうやって、ひとつずつ乗り越えて、去年の悔しさを晴らすんだ。



雨が上がった空には、光が満ちる。



「ナイボッ!」



声は高らかに響いた。






>>Back