■表情でかく小さな感情■

慟哭はやまない(島準)
失った哀しみが(ハルアベ)
まるで憎しみのような(ハルアベ)
驚きに満ちた(イザアス)
憤りの表現(イザアス)



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慟哭はやまない


雨が降る。
何もかもを洗い流すかのように。



俺たちが、積み重ねてきたものは、
その雨の日に、すべて元へと戻されてしまった。


「・・・あ〜ぁ。」


雨が上がって、晴れ渡る空を見ながら、小さく呟いた。
やっちまったな、と思う。
自分たちが初戦敗退なんて、考えもしなかった。
もっと、ずっと、このメンバーで野球を出来ると思っていた。


涙で視界が霞む。
もう雨は止んでいるはずなのに、まだこのベンチには雨が降っている。

肩を抱き合い、抱きしめ合い、言葉にならず、涙を零す。
想いは、今もひとつだった。


「・・・あ〜ぁ。」


もう一度、声にした。
笑ったはずだったが、くしゃくしゃの笑顔には、涙が光っていた。










失った哀しみが


今になって、改めてその存在の大きさに気が付く。
ただの的だったはずの後輩は、
いつの間にこんなにも自分の心を占めていたのだろう。

隣に居ないその人物に、想いを馳せる。

怒ったり、笑ったり、泣いたり、
感情表現の豊かな奴だった。
怪我をしてからの自分に真っ直ぐに向かってきてくれる、
唯一の奴だった。



あいつからしてみれば「今更」なのだろう。
自分でもそう思うのだから仕方ない。
ただ、こうして硬球を握りながら、
ふと前を見て、お前じゃないことを、
淋しいと思う自分がいることも事実なんだ。


目の前のミットに向かって、投げる。


ただそれだけのことだ。
それだけのことなのに、
時々、泣きそうになる。


今更だけど、お前が恋しいよ。











まるで憎しみのような


この想いは、いったいどちらなのだろう。
出逢った当時抱いていた憧れは、いつの間にか消えてしまっていた。
残っているのは、彼の野球に対する態度への不満だけ。

なのに、投げている彼をかっこいいと、美しいと思ってしまう。
一瞬の動作で、彼が何をしようとしているのかに、気が付いてしまう。
言葉に、彼の考えを読み取れてしまう。

恨みばかりが詰まっていると思っていたあの頃の思い出のほかに、
オレと彼の間には何があったのだろう。



今、笑顔で新たな仲間とともに野球をするあなたに、
素直に笑えないのは、どうして・・・?









驚きに満ちた


『好きだ。』

そういったときの、あいつの顔を思い出すたびに、
笑いが零れそうになる。

今こうして隣に居るあいつに、この想いを伝えたとき、
普段のポーカーフェイスは崩れ、
初めて、素のあいつを見た気がした。

瞳を見開いて、何かを言おうとして、声が出せずにいるあいつ。
そのとき、何を言おうとしていたのだろう。



「何、にやついているんだ?」

いきなり、ネクタイを引っ張られた。

「いや、ちょっと昔を思い出していただけだ。」
「集中しないなら、そこをどけ。」
「断る。」

そして、俺は目の前のエースパイロットに、体を重ねた。










憤りの表現


何も言われない。

それがどれだけ苦しいことなのか、初めてわかった気がした。



普段なら、事あるごとに怒鳴り散らすあいつは、
今日は何も言わない。
瞳をあわそうともしなかった。

今日のことは、明らかに自分のミスだった。
その所為で、仲間を自分を危険に晒すことになってしまった。
これが、訓練ではなく本物の戦場であれば、
自分だけではなく、仲間も死ぬことになってしまっていただろう。
それだけのことをしたということは十分にわかっていた。



「何も言わないのか?」



誰も居なくなった休憩室。
二人きりになったとき、俺は尋ねた。

「何についてだ?」
「今日のことさ。」
「自分のミスだということはわかっているんだろ?」
「あぁ。それはわかってる。
ただ、いつもなら怒鳴るのに、今日は何も言わないんだなと思っただけだ。」
「そんなに怒鳴って欲しいのか?お前はそんな趣味があったんだな。」
「誰もそんなことは言ってない。」
「言ってるだろ?ミスをしたから怒鳴ってくれと。」
「だから、そんなことは言ってない。
いつも怒鳴るお前が何も言わないから気持ち悪いだけだ。」
「・・・・いい加減に気が付け。」
「・・・え?」
「呆れているだけだ。お前のその行動にも、その鈍さにも。」
「はぁ?」

先程までの揶揄するような表情は消え、大きく溜め息をつくと、
イザークはめんどくさそうに口を開いた。

「お前のミスは、お前だけでなく、仲間を危険に晒そうとした。
それは、十分にわかっているんだろ?そんなことを聞かなくても分かる。
お前はもう少し自分の命を大切にしたらどうだ?
仲間を守ることも大切だが、自分が死んでしまったら意味がないだろ。」

最後に『それぐらいわかれ。』と言ったときの彼の表情に、
やっと先程までの行動の意味が分かった気がした。

「・・・お前は、俺が死んだら泣いてくれるのか?」
「誰が泣くか。涙一つ流すことなく、送り出してやる。」
「・・・ありがと。」
「ふんっ。気持ち悪い。」








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