時にはこんな日も。 「眠ぃー。」 今日は一日中練習の日で、今はちょうど昼休み中。 春の暖かい陽射しに包まれ、空は快晴。 グラウンドの周りには桜の木が多くの花を咲かせている。 昼休みはお花見と化し、いつもより長めにダラダラ。監督もコーチも楽しそうに、子供たちと弁当を食べていた。 俺はというと、モトキさんに引っ張られるままに、皆とは少し離れたベンチにきていた。 モトキさんが戸田北に来てから、半年近く経つ。それでも、みんなでわいわい騒ぐのはあまり好きにはなれないらしい。皆の輪の中に少しの間、顔を出してから離れてしまった。 「眠い、タカヤ。」 弁当を食べて、お腹も膨れて、そうすると襲ってくるのは眠気だけだ。こんな気持ちのいい日に、眠くならないはずがない。俺もあくびをしながら、そこに座っていた。 「俺も眠いんです。眠いんだったら勝手に寝てください。」 まだ練習が始まるまでは時間があった。時計はまだ1時になっていなかった。昼寝をするくらいの時間は十分にある。 「じゃ、それどけろ。」 指差されたのは、膝の上に置いていた弁当箱。俺が首を傾げていると、早くどけろと目が語る。 「どければいいんでしょ。」 小さく文句をいいながら言われた通りにすると、何を考えているのか、いきなりモトキさんが寝転がってきた。 「何してンっすか?!ちょっ、どいてください。重い!」 弁当箱をどけると、そこに当たり前のようにモトキさんが頭を置いてきた。いわゆる、膝枕だ。 「貸せ。」 それだけ言うと、顔に帽子をのせたまま、眠ってしまう。小さいベンチにでっかい図体を横たわらして、俺には膝枕をさして。さすが、榛名元希!といわれんばかりの行動に俺は呆れてしまった。 「はぁ。」 と、小さく溜め息をついて、この塊をどうしようかと考える。練習が再開されるまではまだ30分近くある。このまま強引に頭をどかして、他のメンバーのもとへいってもいいが、あとで何を言われるかわかったもんじゃない。結局、俺が損をするのは目に見えている。 「はぁ。」 俺はもう一度溜め息をついた。 お日様が気持ち良くて、眠いのはよくわかる。自分も先ほどから、何度もあくびをしていた。 「あっ!」 すると風が吹き、モトキさんの帽子を持っていきそうになった。慌てて、帽子を捕まえ、元の場所に戻そうとする。そして、そこにある寝顔につい微笑んでしまった。 「こうしてりゃ、可愛いのに。」 いつもは1つしか違わないのに、まるで世界が違うような顔をしているこの人も、寝ているときは子供なんだな、と改めて思ってしまった。可愛らしい顔をして、気持ちよさそうに寝息をたてるその姿は、年相応に見える。 「まっ、いいかな。」 こんな日があってもいいかなとつい思ってしまう。 他の奴にはこんな姿をめったに見せないこの人も、俺には気にしないらしい。 そうされることが、なんとなく嬉しかった。俺だけは特別なんだと教えてくれているようだったから。 俺は、時計を見て時間を確認すると、帽子を最初の場所へと戻した。このまま見ていたい気もするが、他の奴に見られるのはもったいない気がしたから。 そして、自分もうとうとと、瞼を閉じた。 もう少し、このままで。 まだ、1年は始まったばかり。 END |
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