戸田北的バレンタインv



「2月17日(土)の出来事」


本日は、昼からシニアの練習があった。
特に何かあるわけでもなく、普通に過ぎていった。
いつも通り、ノーコンの誰かさんの球を、ミットだけでなく、体でも受けながら、けっこう必死で。まぁ、前ほど落とさなくなっただけマシだろう。

練習も終わって、着替えていたら、何故か先輩たちはそわそわしていた。
理由が全くわからなかったので、話に入らずに居ると、隣の投手さんが、いきなり場違いな質問を投げてきた。

「お前、チョコ何個貰ったんだ?」
「はぁ?」
「バレンタインだよ、バレンタイン。今週だっただろ?」
「あぁ・・・。」

そういえば、そんなものもあったなと思っていると、左手が差し出されていた。

「何ですか、それ?」

アンダーを脱いで、カッターに腕を通しながら、視線で、何だ?と目の前の瞳を見返す。

「何?じゃなくて、俺に渡すもんがあるだろうが。」
「・・・はい?」
「だーかーら、チョコ。俺に渡せ。」
「・・・」

どう反応していいか、わからない。
タカヤが呆然としていると、他のチームメイトたちは居た堪れない雰囲気に、そろそろと部屋を後にして行った。正しくは、外で様子を伺いに。

「あの・・・、何で俺があんたに渡さないといけないんですか?」
「はぁ?お前は俺の女房役だろ?」
「だから、何だっていうんですか?第一俺は男ですよ。」
「んなの、カンケーねぇ。俺が渡せって言うんだから、渡せ。」
「何様ですか?」
「俺様?」

その言葉を聞いて、タカヤは盛大に溜め息をついた。
俺様だということはわかっていたが、まさか自分で言うとは。呆れてものも言えなかった。

「ほら、早く。」
「あの、んなの準備してませんけど?」
「ったく、用意わりィーな。」
「だから、俺はあんたのファンでもなきゃ、女でもねーんだよ。いちいち用意してるわけないだろ!」

下手に出てりゃ、図に乗る。
キレないように注意してても、ついキレてしまう・・。

「用意してねーなら、今すぐ買えばいいだろ?帰りにコンビニもあることだし、ちょーどいいじゃねーか。」
「はぁ?」
「だから、帰りに買えばいいだろ?」
「なんで、俺が?」
「俺が欲しいから。」
「じゃ、他の女の子にでも貰えばいいじゃないっすか。」
「んなの、この前貰った。」
「なら、もういいでしょ?」
「駄目だ。」
「だから、何で俺があんたに渡さないといけないんですか?」

「俺がお前から欲しいからに決まってるだろっ!」

言ってしまって、モトキはどうしていいかわからなかった。顔が真っ赤になって、自分の発言に今更、恥ずかしさを覚えた。
一方、言われてしまったタカヤも照れるしかなく、二人して、無言になってしまう。

そんな時間が暫く続いて、お互い何か喋ろうとして前を向くと、また瞳があって、苦笑するしかなった。

「・・・ったく、渡せばいいんでしょ、渡せば。」

タカヤが先に折れると、モトキは、「最初からそーいえばいいんだ」とかブツブツいいながら、着替えを再開した。

「帰りにコンビニ寄るんだから早くしてくださいよ。」

タカヤは、小さく微笑みながら、部屋を後にした。






(二人の出て行った後・・・)



「俺もあんだけ強引にいけたらなー。」
「てか、あれはモトキにしかできないだろ。」
「あの爆弾発言もな。」
「俺も、タカヤからチョコ欲しかったな。」
「俺もー。」
「俺も。」

やっぱりアイドルのタカヤからのチョコは欲しいらしい、先輩方。
一方、コンビニに寄った二人は・・・。





「はい。これでいいんでしょ?」
「おぅ。」
「チロルで我慢してくださいよ。」
「おぅー。」
「お礼ぐらい言ったらどうですか?」
「サンキュ。」
「どういたしまして。ちゃんとお返しくださいよ。」
「ん?」
「ホワイトデー三倍返しでよろしくお願いしますね。」
「ん?あぁー。」
「約束しましたからね。」
「おぅ。」


END


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