貴方に触れられた場所から、俺の中を何かが侵食していくように、
貴方に触れられただけで、体温が一度上がる。





「・・・かゆい。」

 夏場で、汗が止まらない時期だというのに、こういう場所を蚊にかまれるのはどうかと思う。かゆいし、しみるし、痛いし。いいことなんて、ひとつもない。

「どうしたんだよ、さっきっから。」
「いえ、何でもないっす。」
「ないなら、集中しろよ。怪我するぞ。」
「わかってますよっ!」

 練習中もいつも以上にその場所が気になった。たぶん、そのことにモトキも気が付いたのだろう。心配してくれてるのか、ただ怒っているだけなのか、わかりにくいのが困るところだ。


 モトキさんにグダグダ文句を言われながらも、何とか練習は問題なく進み、休憩に入れた。
 水道で勢いよく水を浴びる。熱い陽射しに、冷えた水の感覚が気持ちいい。
 頭から水をかぶって、ついでに首の付近まで濡らしていると、後ろから声が聞こえた。

「お前、コレの所為だろ?今日、集中できてなかったの。」
「・・・え?」

 水道を止めて、顔をあげる。後ろを振り返るとモトキさんがいた。

「だから、今日ずっと気にしてたのコレかって聞いてんだよ。」

 そういいながら、首下を触られた。

「・・・そうっすけど。」
「お前、器用なとこ刺されんな。普通、んなとこ刺されねーだろ?」

 笑いながら、刺された痕を指差すモトキに、タカヤは自然と後ろを向いた。自分でも、そう思っているのだから、それ以上いろいろ言わないで欲しかったのだ。

「・・・ぇ?」

 後ろ向いていると、突然背中に熱を感じた。モトキさんが後ろに立ったようだ。

「でも、こういうのって、・・・そそるよな。」

 耳元で囁くように言われる言葉。そして、そのままその痕に唇付けられた。

「・・・な、何すんですかっ?」
「何って、こういうこと?」

 後ろからタカヤの動きを阻むように抱きしめると、モトキは首下に何箇所も唇付けを落としていく。その行為に、タカヤは全く動けなかった。

「・・・暑い。」
「・・・ん?」
「暑いです。」
「だから?」
「どいてください。」
「何で?」
「暑いから。」
「・・・嫌だ。」
「嫌だって・・・。」
「オレ、楽しいもん。」
「楽しいって・・。」
「・・・おう。」
「だから、どけっつってんだよ。」
「うわっ!」



 体が熱くて堪らない。熱が溢れ出して、止まらない。だから、傍に居て欲しくなかった。



「ってーな。」
「すみません。でも、あんたが離れてくれなかったから。」
「ったくもー。」

 声が小さくなる。いつものように、振舞えない。体が熱い。

「お前、どうしたんだ?」
「・・・別に。」
「理由がねーなら離れねー。」

 再び、抱きついてくるモトキに、タカヤはどうしていいかわからなかった。

「・・・熱いんですよ。」
「・・はぁ?」
「あんたが触れたら熱くて堪んないんですよ。」
「・・へ?」
「・・・もう、言わないです。」

 耳まで赤くさせるタカヤに、モトキは笑いを堪えながら、そっと耳に唇付け、もう一度首に痕をつけた。



「・・・お前、可愛いとこあるよな。」



 ついつい呟いてしまった言葉に、タカヤがどういう反応をしたかは本人しか知らない。









END


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