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陽だまりの詩 「早いなぁ。」 すべてが終りを迎え、始まりを迎えて、いくつかの季節が過ぎた。 暖かい陽射しに誘われるように窓を開けると、櫻の香りとともに数枚の花弁が舞いこんできた。 「どうかしたのか?」 眩しい光に。隣で寝ていたイザークが目を覚ましたようだった。 「いや、櫻だなって。」 「綺麗だな。」 「あぁ。」 イザークは身体を起こすとアスランにシャツを羽織らせ、自分も同じように窓の外を眺めた。 久しぶりに二人きりで過ごす休日。 働き詰めの毎日が嘘のようなこの麗らかな日は朝から優しい気分にさせてくれた。 「食事はどうする?」 アスランが時計を確認しながら尋ねた。 時計の針はもうすぐ正午を指そうとしていた。 「外で食べるか。」 「お花見か。いいな。」 櫻は気付かぬうちに咲き誇っていて、お花見をするにはもってこいだった。 「じゃ、適当に作るか。」 そういうと、アスランは服を着てキッチンへと消えていく。 残されたイザークは枕についていた櫻の花弁を見つけて手に取った。 白い布の上に散らばった数枚の花弁は、まるで誰かの身体に散った鬱血のようにも思えた。 「バレたら怒鳴られるな。」 考えていたことを口にしたときのアスランの態度を思い浮かべて、イザークは苦笑した。 「俺も行くかな。」 窓を開けたまま、春の風を部屋に招き入れ、自分は服を着てアスランのもとへといった。 こんな幸せな生活をあの頃は思い描けなかった。 生き残ることが大切で、そのためにならどんな努力も惜しまなかった。 愛しい者を敵に回したことさえあった、あの頃。 櫻を楽しんでいる時間なんてあるはずもなかった。 「気持ちいいな。」 咲いては、散っていく櫻を眺めながら、遅めのブランチを食べる。 「あぁ。」 忙しなく過ぎていく、日常にひとときの休息を。 こんなゆったりした一日があってもいいな、と何となく思えた。 舞い散る櫻の花弁に、あの頃の想いを馳せては、今在る幸せを感じる。 託した切ない想い出、また土へと返っていくようにと。 そして、生きる糧になることを望み、戻ってこないようにと願う。 「幸せだな。」 今を生きていることに感謝を・・・。 「幸せだな。」 あなたといることに感謝を・・・。 END |
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