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すべては、この暑さの所為にして・・・。 「何の用だ、アスラン?」 入ってくる人物が最初からわかっていたように、イザークは背中越しに、部屋に入ってくる人物に話しかけた。 「よくわかったな。」 アスランもその態度を気にしている様子もなく、当たり前のように、イザークの傍へと近寄った。 「で、何の用なんだ?」 背中越しに、アスランの体重を感じながら、イザークはいった。アスランは、何も言わずイザークに抱きついている。 「用がないのなら、どけ。」 重い、とイザークは続ける。 アスランは、その言葉に少しだけ笑いをこぼした。 「出て行けとは言わないんだな。」 「言って欲しいのか?」 いや・・・、とアスランはこちらを向いたイザークに縋り付くように体を寄せた。 「お前は何でもわかってるんだな。」 欲しい言葉も行動も、アスランが口にしなくても、イザークはしてくれた。 かけられた体重を押しのけることもせず、イザークは、その体重を受け止めていた。 「イザーク・・・、」 「このまま何をされてもいいのなら、そのままでいろ。嫌なら、早くこの体をどけろ。」 アスランが何かを言う前に、イザークがそれを遮った。 (こういう言葉すら、言わせてくれないんだな・・・。) アスランは、自分が言おうとしていた言葉すら、言われてしまい、苦笑しながら、その背中に腕を回した。 それを合図に、イザークはアスランの唇に口付けた。 背中越しに、部屋の鍵をかけ、そのままベッドへと倒れこむ。 二人分の体重に、ベッドが軋んだ。 剥ぐように互いの服を脱がす。 溺れていく二人のように、口付けはどんどん深くなっていく。 「・・・んっ・・」 口腔を弄るように、舌はアスランの快感を引き出していく。 上顎の弱い部分をなぞられると、アスランの唇からくぐもった声が漏れた。 「・・ぁ・・、ん・・」 唇から鎖骨へ、鎖骨から胸へ、胸から腰へ、と落ちていく口付けは、先ほどのイザークの言葉とは裏腹に、とても優しかった。 優しく、労わるように、彼の指先はアスランの柔肌に触れる。漏れる声は、次第に艶を帯びていった。 「やっ・・」 ゆるく立ち上がった自身を口に含まれると、アスランは声を上げた。 だが、それは簡単に無視されて、イザークは行為を続ける。 「あっ、・・ん・・ぁ・・」 徐々に硬さを増す自身と同じ様に、啼く声は高くなった。 「イザっ・・もッ・・」 イザークの頭を離すように、押してみるが、力の抜けきったアスランにはどうすることもできず、そのまま熱を吐き出してしまった。 イザークが、前髪をかきあげ、瞳をあわせたまま、喉を鳴らす。 その表情はとても妖艶で、アスランは瞳を逸らすことができなかった。 見つめ合う距離は徐々に縮まり、噛み合うように口付け合う。 まるで、獣のように。 後は、熱に浮かされるまま、体を重ねる。 「あん・・・ぃ・・っん・・」 突き上げられる感覚に、下半身から甘い痺れが広がる。声を抑えることすらしない。 「・・もっ・・と、・・イザっ、」 体が欲するまま、求め合う。 そこに、恥じらいなど存在しなかった。 甘い空気すら持たないはずの行為は、 何故か、アスランの心は満たしていった。 肌から伝わる不器用な優しさの所為なのだろうか。 ベッドの軋む音は次第に早くなり、終わりが近いことを告げる。 寒いくらいに効かせた冷房も、今は意味をなさない。 額に汗が伝い、体は熱が支配する。 一際高い声が部屋に響いたあと、イザークは小さく声を上げ、アスランの中に熱を放った。 体を重ね合わせるように、ベッドに倒れこむと、そのまま、暫し余韻に浸る。 例えば、恋人同士ならそこで何があったか聞かれるのだろう。 否、この行為に浸る前に、聞くのが普通なのだろう。 しかし、二人にとって、この行為にそれほどの意味はなかった。 「・・助かった。」 アスランが、天井に呟くように言う。 「そんなに溜まっていたのか?」 イザークは揶揄するように言った。 その言葉にアスランは気にした風もなく、そうかもな、と笑った。 聞かれても答えるつもりのなかったアスランにとっては、その言葉はとても助けられた。 愛していると伝えられるより、その言葉のほうがアスランの気持ちを楽にするのだ。 親友が・・・否、大切な者が敵に。 それが、仮説や間違いで終わればよかったのに、 事実であることを自分で確認してしまった。 部屋を整理していて、見つけた写真に写るその姿が、今は、辛くて仕方なかった。 そんな気持ちを忘れてしまいたくて、訪れたここは、酷く心地よい場所だった。 「最初からお前だったらよかったのにな・・。」 不意に零れたアスランの本音を、イザークは聞こえなかったのか、それとも聞こえなかった振りをしているのか、何も言わず、ただ、赦すように優しく頭を撫でた。 すべてを知った上での、優しさ。 その心地よさに、アスランはゆっくりと瞳を閉じた。 すべては、この暑さの所為にして・・・。 END |
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