雨が降る。
心地よいリズムを刻みながら、
静かに、地面を濡らす。


それは、ある雨の日の出来事


朝、イザークがいつもより遅く目を覚ますと、隣には誰も居なかった。アスランは、既に仕事に行ってしまったのだろう。
イザークは、ゆっくりと体を起こし、カーテンを開けた。

外は、雨が降っている。

今日は、偶然仕事が休みで、特にしなければならないこともなかった。晴れていたら、洗濯でもしようかと思ったが、この雨ではそれも出来そうにない。
イザークは、軽くブランチをとり、ソファーに座ると、小説を読み始めた。最近は忙しく、こうやってゆっくり本を読むこともなかった。久しぶりの休暇を読書に費やすのも悪くはないと、イザークも手に取った本に没頭していった。

 雨の音は、時の流れをより一層ゆっくりしたものに感じさせた。他の世界から自分だけを切り取ってしまうように、特別な空間を造りあげるような。

 +++

「・・・ただいま。」
「イザーク・・・?」
 彼の名前を呼んでみたが、反応がないので、アスランはリビングへと向かう。入ってすぐに、目的の人物を見つけると、アスランは小さく笑った。
 目の前には、珍しくソファーで転寝をしているイザークが居た。
イザークは、眼鏡をかけたまま、小説を胸におき、心地よさそうに寝息を立てている。アスランは、起こさないように彼に近付くと、その眼鏡を外し、「ただいま」と唇付けた。

+++

「・・・帰っていたのか?」
「あぁ、ただいま。」
暫くして、イザークは目を覚ました。コーヒーのいい香りが部屋に満ちている。イザークは、軽く辺りを見回して、自分がそのまま寝てしまったことに気付いた。足元には、ブランケットがかけてある。
「お帰り。雨、きつくなかったか?」
「そうでもなかった。けっこう降ってるけど、そんなにきつくないよ。」
 寝転がったまま、話しかけていたイザークは、眠気眼を擦りながら、体を起こした。そして、眼鏡をかけていないことに気付く。
「・・アスラン。」
「うん?コーヒー淹れたよ。飲むだろ?」
 淹れたてのコーヒーをカップに注ぎながら、アスランはこちらを振り返った。その姿を見て、イザークは苦笑して立ち上がる。
「あぁ、貰う。・・・それと、これもな。」
 コーヒーを淹れるアスランの隣にイザークも並び、アスランがつけている見覚えのある眼鏡に手を伸ばす。
「ほっといて悪かったな。」
 耳元で囁きながらそっと外すと、掠めるように唇付ける。
「当たり前だ。」
 アスランも軽く微笑みながら答えると、カップの代わりに、イザークの肩へと腕を回す。その行動に、イザークは不敵に笑い返すと、先程よりも長く、深く唇付けた。
「埋め合わせは、きちんとしてやる。」
 その言葉にお互い見つめあい、噴出してしまう。
「その前に、コーヒーを飲んでしまおう。」
 アスランは、淹れたてのコーヒーを差し出しながら、言った。
 
 
 普段の生活からは隔離された特別な空間。
雨のカーテンに隠されたひとときは、ささやかな楽しみを与えてくれた。
そんな、とある雨の日の一日。


END


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