forbidden fruit -after days-



「久しぶり。」

 綺麗な微笑みとともに発せられた平凡なあいさつに、銀髪の青年は、不機嫌そうに眉を顰めた。その様子を眺めていた紺色の髪の青年は、変わらずその微笑みを顔に浮かべたまま、苦笑する。

「相変わらずだね、イザークさんは。」
「お前もだな、アスラン。」

 一触即発の雰囲気が会議室中に漂う。

「じゃ、会議を始めましょうか。二コル、用意していたものを配って。」
「ディアッカ、お前も配れ。」

 アスランの声を合図に、会議の準備が始まった。今年初めての合同会議は、謂わば、顔合わせのようなものだ。新しく入った者や肩書きの変わった者の紹介と今年一年の予定の確認が大きな内容である。

「では、こちらから簡単に紹介させてもらう。」

そう言って、イザークはゆっくりと立ち上がる。その優雅な仕種に数人の生徒が見惚れてしまっていた。

「俺は、一校生徒会会長の三年のイザーク・ジュールだ。」

 高慢な物の言い方に、驚く生徒も数人いたが、殆どの生徒は苦笑しながらそれを聞いていた。実際、彼の仕事ぶりを見ていたらその物の言い方も納得できる程のものだからだ。

「俺は、副会長で三年のディアッカ・エルスマン。よろしく。」

 副会長に続いて、書記、広報と北校生徒会の面々が挨拶をしていく。一通り挨拶が終わると、「では、こちらも。」とアスランが立ち上がった。

「俺は、二校生徒会会長の二年のアスラン・ザラです。どうぞよろしく。」

 イザークとは打って変わって、穏やかな物腰の挨拶に、場の空気が和む。一人だけは相変わらずの様子だが。

「僕は、二年で書記をしているニコル・アマルフィです。よろしくお願いします。」

 続いて、東校と同様に南校の面々が挨拶をしていく。全員が、挨拶をし終えると、イザークが立ち上がって、進行を始めた。
 合同会議の場合、席を設けている側が進行をするのだが、今回は会長であり最高学年のイザークが務めた。

「では、第一回合同会議を始めます。今回は、年間予定の確認と・・・」

 手馴れた様子で話を進めていくイザークを、終始アスランは穏やかに微笑みながら見つめていた。

「お疲れ様。」
「お疲れ。」

 会議を終え、皆が帰った後の会議室に二人はいた。

「イザーク、お前、もう少し話し方を穏やかにできないのか?お前のとこの新人は大丈夫かもしれないが、こっちの新人のことも考えてくれ。」

ビビってたぞ。と、苦笑しながらアスランは言った。
 イザークはその言葉を全く無視して、椅子に座っているアスランを背中から抱きしめた。

「ビビられるくらいでちょうどいい。」
「俺が、嫌なんだけど。」
「どういう意味だ?」

背後から抱きしめたまま、イザークはアスランを覗き込むように訊いた。

「そのままの意味だ。」

そう言って、アスランはイザークの腕に手を置いた。イザークも抱きしめる腕に力を込める。
 二人だけの空間がそこには在った。

「一年だな。」
「あぁ。」

 桜が咲き、散り始めた頃、二人は出会い、そして、もう一度同じ季節が廻ってきた。

「今年も、いろいろと頼みます。イザークさん。」
「二人のときに、その呼び方は止めろ。気持ち悪い。」
「一応、ここ学校なんだけど?」
「今は、関係ない。」

イザークらしいな。と、アスランは苦笑した。そして、イザークの腕を解き、向かい合った。

「これからもよろしく。イザーク。」
「あぁ、よろしく。アスラン。」

 穏やかな声は、心地よく響く。
厳かな誓いの儀式のように、二人はゆっくりとくちづけた。

 春風に、桜の花弁が舞った。







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