PartV 01.


花壇には空を仰いで咲く向日葵が。
辺りに響く蝉の声が。
夏の訪れを告げた。


そんな暑い夏も終りを迎え、新しい学期が始まった。










「おはようございます。」

「おはよう。」


新学期を迎えてすぐ体育祭が行われる。
聖学園では学園祭は6月に行われるため、二学期の大きな行事といえば体育祭のみとなる。
おかげで、生徒たちは夏休み明けの弛んだ体に鞭打って、リレーなどの練習をすることになるが、
そんなことを気にする生徒などほとんどいない。

なぜなら、男子校の体育祭は熱いのだ。

受験生である3年ですら練習を怠らないほどである。
むしろ、勉強漬けだった夏休みの鬱憤を晴らすかの如く、気合が入っている。
今の生徒も朝練を終えた後だった。



「みんな今年も張り切ってるな。」
「そうみたいだな。」

職員室に入る前、偶然出会ったイザークとアスランは、少し話ながら窓の外を見ていた。
まだ、グランドで走っている生徒もいる。

「今年も盛り上がるな。」
「あぁ。楽しくなりそうだ。」

去年よろしく、大盛り上がりになりそうな当日を想像して、二人は微笑み合った。

「あっ、そうだ。今日、君のとこにいってもいいか?」
「音楽室か?」
「あぁ。あそこからだとうちのクラスの練習風景がよく見えるんだよ。」
「なるほど。なら、今日だけと言わずいつでも来ればいい。」
「ありがとう。そうさせてもらう。」

話し終えるとすぐに、職員会議が始まった。
二人は、足早に自分の席へと戻った。










 + + +










アスランは、終礼を終え、一息つくとそのまま音楽室へと向かった。
もう少しすれば、自分のクラスの練習が始まる。





「失礼します。」





一応、アスランは声をかけてから中に入った。
中には誰もいない。
大きなグランドピアノだけが存在感を示していた。


外を見ると、着替えた生徒が続々と集まり出す。
このときだけは、部活よりもクラスが優先されていた。
まだまだ暑い放課後に、汗を流しながら大きな声を出し練習する風景は、
見ていて気持ちがいいものだった。
暫くの間、アスランは窓際に立ちながらその様子を見ていた。
すると、後ろのドアが開いた。


「早速、お邪魔させてもらってる。」
「あぁ。早かったな。」


入ってきたのはイザークだった。
アスランは振り向かず、窓に映った彼を確認しながら答えた。
イザークも、アスランに気にすることなく、ピアノのほうへと向かう。

イザークは、暇なときはよくここでピアノを弾いている。
専門はヴァイオリンだが、学校で弾いている姿をアスランは見たことがなかった。


後ろから流れる優しい曲をBGMに、暫しの間グランドを眺めていた。










 + + +










「なぁなぁ。あれって、ザラ先生だよな?」

練習中、シンが音楽室を指差しながらレイに話しかけた。

「あぁ、先生だな。俺たちの練習を見てるみたいだな。」
「なら、俺頑張らないと!先生に俺の勇姿を見てもらわないとな。」

はいはい。と苦笑しながら答えるレイに少しむくれながらも、
ふと、シンは音楽室の先生に考えを向けた。

「でも、音楽室ってジュール先生がいるんだよな。
なら、あそこに二人っきりなのか?」
「ここからじゃ、よくわからないな。まぁ、目的は俺たちを見ることだろ?
さっきからこっちしか見ていないみたいだ。」
「だよな。さっ、練習頑張るかな!?」

そういいながら、テンション高く練習に戻ったシンを見たあと、レイは音楽室に目を戻した。
ちょうどそのとき、アスランの隣からイザークが現れて、
二人とも音楽室の奥へと消えていくところだった。

(シン・・・やっぱり、ふたりっきりみたいだな。)

レイはタイミングよくシンが練習に戻ってくれたことに感謝した。










 + + +










それから1、2時間が経って、5時を迎えた。
チャイムともに、グラウンドがクラス練習から部活へと切り替わる。
クラス練習を終えた生徒は、部活にいったり教室へ戻ったりとそれぞれ動き出した。

「終ったのか?」
「そうみたいだな。ありがと。」

差し出されたコーヒーを貰うと、アスランは背中を窓に預けた。

「今年の体育祭は期待できそうだよ。」
「よかったな。またクラスに賞状が増えるのか?」
「そうなれば嬉しいよ。」

貰ったコーヒーに口をつけながら、グランドピアノに視線を移した。

「そういえば、アメリカはどうだった?」
「あぁ。知り合いの楽団のテストみたいなのを受けてきた。」
「海外で演奏するのは君の目標だったからな。で、上手くいったのか?」
「自分ではそう思ったが、向こうの印象は少し違ったらしい。
それでも、誉めては貰えたけどな。」
「なら、大丈夫そうだな。結果は、まだかかりそうなのか?」
「あぁ、たぶん今学期の終り頃だろう。」
「そうか。いい結果が出るといいな。」

そう、アスランが微笑むとイザークも、あぁ。と軽く微笑んだ。


外は、薄っすらと赤みが注し始めていた。
グランドからは、部活に励む生徒たちの声がこだまする。










 

 

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