| PartW 05. その晩、シンは死んだように眠った。 夢を見ることもなく、深い深い眠りについた。 まるで、この1日の出来事から逃げるように・・・。 朝、学校へ登校する足取りが重い。 昨日、何も考えずに眠りについたはずなのに、今朝、目を覚ますと、涙が頬を伝った痕が残っていた。 1日を過ごすことが、シンにはとても長く感じられた。 アスランの後姿を見かける度に、昨日のことが思い出された。 あの日、自分を本当に見てくれなかった。 自分を通して、誰かを・・・あの人を見ていた。 そして、何よりも心にひっかかっていたのは、最後の言葉だった。 何かを諦めるかのように、いや、既に諦めていたような・・。 『彼しかいないんだ。彼しか・・・。』 穏やかでいて、どこか陰を持った表情。 だが、その表情がシンにはとても美しく写った。 あぁ、好きなんだな・・。 と、改めて実感しまう。 ふられたはずなのに、時間が経てば経つほど、自分の気持ちに気付いてしまうのだ。 開き直って、見てくれないのなら、見させてやるって・・・。 なのに、どうして・・・。 「あれ?どうして・・・。」 終礼が終わり、教室にはいつの間にか、シンだけが残っていた。 レイも今はここに居ないらしい。 「ヤバッ・・。」 涙が溢れ出して止まらない。 1日を過ごしきって、緊張の糸が切れたように、涙が零れだす。 ――告白した。 ――ふられた。 時間が経つにつれ、実感が増してきたのだろうか。 いくら止めようと必死に涙を拭いても、止まらない。 止め処なく瞳から零れた。 『・・・先生が好きなんです。』 あの時の、シンにとっての全て。 これが全てだった。 そして、今でも、これだけは変わらない。 シンにとって、この想いだけが真実。 シンは、伝う涙を誰かから隠すように、机に突っ伏した。 だから、気付いてしまったのかもしれない。 アスランと同じような立場に立ってしまったから。 だから、この涙も・・・。 想っても想っても、想いだけが積もっていく・・・。 どこかでアスランを応援していることに気付いてしまった。 何故かふられた相手に、似ていると感じた。 想い続けるほど、心は傷ついて・・・。 あなたが、幸せになってくれればいい。 シンは、自分の想いとは別に、どこかでそう思っていた。 + + + あれからどれだけ時間が経ったんだろうか。 教室には夕陽が射し込んでいた。 「どうしたんだ?シン。」 机に突っ伏していると、上から声がかけられた。 何かの仕事を終えたレイが教室に戻ってきたようだった。 「いや、ちょっと考え事。」 シンはまだ伝えていなかった。 伝えに行くことだけを伝え、その後のことはまったく口にしていない。 レイもそこをあえて聞くようなことはしなかった。 シンもそれに甘えていたのだ。 本当なら、自分から伝えるべきところなのだが。 「どうだったんだ?」 シンが頭の中で、今伝えるべきか悩んでいると、 レイはそれを察したかのように、自ら声をかけた。 「ダメだった。」 「そうか。」 「うん。」 「頑張れよ。」 「うん。」 「どうせ、まだ諦めてないんだろ?」 「うん。」 「お前らしいな。」 「わかってる。」 何があったか。 相手がどんな返答をしたか。 レイは、一切そういったことに触れなかった。 何かを言わずとも、レイはシンのことを理解していた。 現に、こうやって、諦めていないこともレイにはわかっていたようだった。 シン自身、はっきりと自覚していなかったはずのことなのに。 「ありがと。」 「あぁ。」 そっけない会話は、あっという間に終った。 だが、そこに残る空気は、シンにとってとても心地よいものだった。 |