PartW 04.



翌朝、アスランの学校に向かう足取りは、重かった。


どうやって、イザークの顔を見ればいいか、わからなかったのだ。
自分は、普段通り接することができるかのだろうかと。

(俺は・・・。)


「おはよう、アスラン。」

昨日の雨とは違い、青く澄んだ空を見ながら、アスランは、ずっと考え込んでいた。

「おはよう、イザーク。」

後ろから聞きなれた声に、挨拶を返しながら、アスランは後ろを振り向いた。
すると、イザークが眉を顰めながら言った。

「どうしたんだ?体調でも悪いのか?」

アスランの様子がおかしいことに気がついたらしい。
だが、その優しさは、今のアスランには辛いだけだった。

「いや、大丈夫だ。少し寝不足なだけだから。」
「そうか?ならいいが。あまり無理はするなよ。」
「あぁ、わかってる。」

大丈夫だと笑ってはみたが、イザークも納得はしていないだろう。
寝不足だということは、事実だが、
その原因が何であるかはイザークは知らない。
知らないほうがいいのだ。
聞かれても、簡単に話せる内容でもなかった。

アスランを心配して一度振り返ってから、去っていくイザークの背中を見ながら、
アスランは、一人溜め息をついた。

そして、この姿がシンに見られていたんだと思うと、少しだけ笑えて、何故だかとても切なかった。










 + + +










『教師だからですか?男だからですか?』


『俺にはそんなことどうでもいいんです。』





何時からだろう。
そんなことが気になりだしたのは。





『・・・先生が好きなんです。』





何時からだろう。
好きだということを、間違いだと思い始めたのは。





もしかしたら、初めてイザークへの自分の気持ちに気がついたときには、
すでに、そう思っていたのかもしれない。

"リリィの恋人"
"リリィの婚約者"

これだけで、自分の想いが間違いだと認めるには十分だった。
ましてや、相手は自分と同性の男なのだから。


「これだけ、揃えば歪むのかもな。」


アスランは、自嘲的に笑った。


結局、イザークがただの知人だったとしても、
見ず知らずの誰かの婚約者であったとしても、
何も変わらないのだ。
何も。


どちらであったとしても、どちらでもあったとしても、アスランはイザークを愛するだろう。
そして、イザークもまたリリィを愛するのだ。


「皮肉なもんだな。」


一方通行の想いは、いつか、終着駅へと辿り着くことができるのだろうか。





(あんなに純粋に人を想うこと、俺はいつの間に忘れてしまっていたんだろう・・・。)





どこまでも続く青空に、アスランはまた溜め息をついた。





想いに間違いなどあるはずはないのに。
気がつけば、間違いなのだと決め付けていた。

純粋にただ好きな人だけを思うことから、逃げていたのだろうか。
シンの想いから逃げるのと同じように。





人を愛することは、こんなにも辛いことだったんだろうか。









 

 

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