| PartW 03. 「・・・何で。」 アスランの声は、静かにそこに響いた。 何故、自分なのか。 どうして、シンが自分を。 振り向いて欲しい彼は、こちらを向いてはくれないのに、どうして、シンは。 「何でって・・・。先生があんな風に笑うからじゃないですか。あんな辛そうな表情で・・。 あの時、先生を"守りたい"って想ったんです。俺が先生をって。 あんな哀しい笑いさせたくないって。」 シンは、必死にアスランに伝えようとしていた。 今の自分の気持ちを。 「だが、俺は・・・。」 まっすぐにアスランを見て、想いを伝えようとするシンとは反対に、 アスランは、ずっとシンから目を逸らそうとしてばかりいた。 自分の伝えたいこと、全てが先生に届いているんだろうか。 シンは、そんなアスランを見ながら、必死に何かを堪えているようだった。 今も、自分の前に居ながら、ここにはいない彼のことを思っているであろうアスラン。 こうやって、想いを伝えていても、自分のことを見てくれようともしない。 「教師だからですか?男だからですか?俺にはそんなことどうでもいいんです。」 どうして・・・。 俺は・・・。 「・・・先生が好きなんです。」 ただ、それだけ。 それだけなんだ。 堪えようとすればするほど、涙は頬を伝った。 だが、シンは、下だけは向かず前だけを見ていた。 「シン・・・。」 この時、アスランはシンの名前を呼ぶことが精一杯だった。 シンが自分のことをこんなにも想って、考えてくれている。 頭ではわかっていても、アスランは素直に受け入れることができなかった。 "教師だから" "男だから" そんなことを考えているわけではなかった。 (この子が、彼だったらよかったのに・・・。) もっと、残酷なことをアスランは考えていた。 涙を堪え、それでも涙を止められず、だけど真っ直ぐに自分を見てくれているシンを前にして・・・。 「どうして、俺じゃダメなんですか?」 「どうして、先生は俺を見てくれないんですか?」 「なんで、あの人なんか・・。」 想いが溢れ出して止まらない。 シンの言葉は、まさにこの言葉のままだった。 アスランは、自分の先程までの考えが、どれほどシンを傷つけていたのか、考えることが怖かった。 「俺なら先生を幸せにするのに。こんな辛い想いなんてさせないのに。」 自分は卑怯だと想うと同時に、シンが羨ましく思えた。 こんなにも純粋に人のことを想えるシンが。 自分は、男だとか亡くなった親友だとか、いろいろな柵を勝手に作ってしまって、 その中で、自分勝手に悲劇を嘆いていただけなのだろうか。 そうだとしたら・・・、いや、たぶんそうなのだろう。 『そんなことどうでもいい。』 そう言い切れる勇気が欲しかった。 「ありがとう、シン。でも、どれだけ言われても俺には・・・。」 そして、結局辿り着く先は、ひとつしかないのだ。 「彼しかいないんだ。彼しか・・・。」 そう、彼しかいない。 どんなに辛くても、どんなに切なくても、どんなに苦しくても。 アスランにとって、導き出す答えも辿り着く場所も、ただひとつ。 今も昔も、イザークただ一人なのだ。 「先生・・・。」 「・・・ごめん。」 静かな教室に響くのは、誰かの想いの悲鳴か、それとも・・・。 ただ、降り続ける雨が全ての音を掻き消した。 |