| PartW 02. 「先生って、ジュール先生のことが好きなんですよね?」 あまりにも突然で、心の中を見透かされたような質問に、アスランはただ言葉を失った。 「・・何を言ってるんだ?」 アスランは、動揺が隠せなかった。 予想していた内容とは、全く掠りもせず、それどころか、自分のことを・・・。 (・・・どうしてこんな言葉から?) 頭がついていかない。 アスランは、もう一度問い直すことしかできなかった。 「だから、先生はジュール先生のことが好きなんですよね?」 繰り返された台詞。 目の前の生徒――シンは、アスランのことをしっかり見据えていた。 「その答えが何かに関係あるのか?」 訳がわからない。と、アスランは軽くあしらおうとした。 何よりもまず、イザークへの想いを悟られないようにすることが、 今のアスランにとっては、最優先事項だった。 「はい。俺にとってはとても重要なんです。」 シンは、視線を逸らすことなく言った。 「先生たちはとても仲がいいですよね。お互い名前で呼びあってるし。」 「それは、学生時代からの・・・。」 「友人ですか?」 「あぁ・・そうだ。」 「なら、どうして先生はいつもジュール先生のことを見つめてるんですか?」 「・・・ぇ?」 「いつも見てますよね。辛そうな表情で。そして、溜め息をついてる。」 「・・・なっ・・。」 見られていた? あの姿を。 けして、見られてはいけなかったのだ。 イザークを想い、彼の姿を見ては、溜め息をついていた姿を。 「何故・・。」 アスランは、言葉に詰まりながらも、なんとか声に出すと、シンはさも当たり前のように答えた。 「いつも見てるからですよ。」 それは、シンにとっては当たり前のことでしかなかった。 いつも見ていたのだ。 ずっと、ずっと、気になって。 だけど、どうすればいいのかわからず、ただ見つめることしかできなかった。 生徒と教師。 男と男。 問題なんて山積みで。 シンは、すぐに想いを伝えることさえできなかったのだ。 「いつも見てたからわかるんです。ずっと、先生を見てたから。」 シンの言葉に、アスランは、驚きを隠しきれないようだった。 シンにとっては、どうして、アスランがこれ程驚くのかわからなかった。 アスランと同じことをシンもしてきただけなのだ。 「先生は、ジュール先生のことが好きですよね?」 シンはもう一度尋ねた。 「・・・そんなことでわかるのか?」 見てたからわかる? そんなはずはない。 そんなことだけでわかるはずがない。 「見てただけで、俺が彼を好きと?」 アスランは、この気持ちを悟られてはダメだと、必死になっていた。 そんなアスランに、シンは・・・。 「・・・学園祭の日。」 切り出されたその言葉に、アスランは心臓を抉り出されるような痛みとともに 一瞬、目の前が闇に包まれたような感覚に囚われた。 「あの日、偶然職員室にいったんです。そこで先生が・・・。」 見られてしまったのだ。と。 アスランは、シンが最後まで言い終わるまでに悟ってしまった。 学園祭の日は、リリィの命日も近いということで、アスランは気持ちが不安定になっていた。 イザークとのちょっとした時間ですら、二人の想いを確認してしまうようで、辛いぐらいだった。 だから、職員室に逃げたのだ。 その姿を見たのがあの台詞を言った決定的な理由だろう。 それ以上言うのが辛そうなシンを見て、アスランは諦めたようにその続きを言った。 「・・俺のイザークへの気持ちを聞いた。だから、俺が彼を好きなんだと。」 「はい。」 少し先程より声に強さはなかったが、シンの瞳はアスランを捕らえたままだ。 「それで、俺をどうするんだ?」 アスランは自棄になっていたのだろう。 シンがどんな想いで、アスランにこのことを尋ねたかなど考える余裕すらなかった。 「別に、何もしませんし、何も考えていません。」 シンは少し傷ついたような表情でいった。 「なら・・。」 「俺は先生に何かして欲しくてそんなことを言ったんじゃありません。」 言葉にどうしても悲しみが含まれてしまっていた。 シンは傷ついていた。 しっかりとアスランを見て、言葉にしたはずの想いをアスランはちゃんと聞いていてくれたのかと。 「さっき、俺は先生を見てたっていいましたよね。 それがどういう意味かわかりませんか?」 アスランは、何も言わず、シンを見つめ返していた。 「先生と同じですよ!先生が好きだからずっと先生を見てたんです!」 シンは、何か言おうとしたアスランを遮ってそのまま続けた。 「俺は、先生が、ザラ先生が好きなんですっ!」 これが全て。 |