PartT  12.


「もしもし、ディアッカ?今、時間大丈夫か?」
――おう。どうしたんだ?
「いや、ちょっとイザークのことで聞きたいことがあるんだ。」
――イザークがどうかしたのか?
「リリィの命日の日の夜、イザークなんか言ってなかった?」
――なんかって?
「例えば、俺のこととか。」
――お前のこと?・・・そういや、アスランがどうとか言ってたような・・。
「・・・やっぱり。」


イザークは見ていたのだ。
あの日、自分が泣いている姿を。


――やっぱりって、何がやっぱりなんだ?


イザークにしてみれば、どうして泣いていたのかさそがし不思議だろう。
リリィが亡くなってから何年が経つかは関係ないとしても、
墓の前で泣いているのが、自分の友人であるアスランなのだ。
あんな夜中に、どしゃ降りの雨の中で。
たとえ、その理由がイザーク本人であったとしても。

イザークがアスランの想いに気付いている筈はないだろうが、
彼なりに気にはしていたようだった。
だから、今朝もああいう言葉をくれたのだろう。


「いや、こっちのこと。あっ、なんか俺の生徒がこっち気にしてるから、切るな。」
――えっ、あ、って、おい!
「ごめん、ありがと。じゃ!」


何となく嬉しくなる自分がいた。
想い人から気にかけてもらえることは、幸せだった。


アスラン慌てて電話を切り、生徒のほうを振り返った。










 + + +










「ふぅー。やっと終ったぁ。」


テストの終りを告げるベルが鳴り、答案が回収されていく。
今日、最後のテストだったため、皆まずは一息といった感じだった。

「レイ、どうだった?」

シンは、今日が今回のテストの山だったので上手く乗り越えられて、少し機嫌がよかった。

「まあまあだな。たぶん、今日はこれが一番出来たと思う。」
「そっか。俺も同じ。先生もしかしたら少し簡単にしてくれたかな?」
「かもな。いつもよりは簡単だった。」

そうやって、シンたちがテストの出来を話していると隣から何人かが割り込んできた。

「いいよなぁ〜お前らは。」
「ほんとほんと。これが簡単だって。」
「俺たちなんて、なんとか出来ましたって感じだぜ。」
「誰も、簡単なんて言ってないだろ。いつもよりかマシだっていってただけだ。」
「それでも、俺たちにはそう聞こえたのー。」

なんて、グチグチいってる友人を苦笑しながらシンとレイは見ていた。
普段通りのテスト後の会話。





テスト後に回収される課題がなかったので職員室によることもなく、
シンとレイは帰ろうとしていた。

「なぁ、先生どこ行ってたと思う?」
「どこって?」
「ほら、金曜、途中で抜けただろ?」
「あぁ。さぁな。俺たちには一切言わなかったし。」
「ちょうどさ、ジュール先生もいなかったじゃん。だから、ちょっと気になって。」
「そういうことか。」

シンの話を聞いて、レイは苦笑していた。
アスランとイザークが一緒の日にいないと、落ち着かないのだろう。
アスランの想い人がイザークであることを知ってしまっているのだから。

「気になるなら、本人に聞いてみたらいいだろ。」
「教えてくれると思うか?」
「さぁな。聞いてみないとわからないだろ。」
「そりゃそうだけど・・。」

「ほら、前にいるぞ。」
「えっ・・・。」

レイの声に驚いてシンが前を見ると、そこには携帯電話を片手に話しているアスランがいた。
シンたちがいるのに気づくと、アスランはすぐに電話を切った。

「どうしたんだ?」
「シンが先生に聞きたいことがあるみたいです。」

シンが答えるよりも先にレイが答えた。
自分ではなく、シンが聞きたいのだと。

「どうしたんだ、シン?」
「いえ、特に用って訳でもないんですけど・・・。」

シンがもじもじしていると、レイは微笑みながらシンを見返した。

(絶対、あとで文句言ってやる・・。)

レイの笑みにすぐに怒鳴り返したい気分だったが、
アスランが目の前にいる以上、シンがそんなことをできるはずもない。
なんとかレイを睨むだけで留めて、前を向いた。

「あの、先生って金曜どこにいってたんですか?」

シンは、単刀直入に切り出した。
アスランは、少し困ったような顔をして答えた。
プライベートのことを聞かれたので、答えに迷ったようだ。

「金曜はちょっとお参りに行ってたんだ。」
「お参りですか?」
「あぁ、大切な友人のな、ちょうど命日だったんだ。」
「そうだったんですか・・・。」

あんまり言いたくないよな。と考え、シンが話を切り上げようとすると
横からレイが核心を突いた。

「もしかして、その友人ってジュール先生の知り合いの方ですか?」
「ぇ・・どうして?」

さすがに、いきなりイザークの名前を出されたため、アスランも驚いてしまった。
質問に質問で答えてしまっている。

「いえ、ジュール先生も先生が早退された日お休みだったんで。
それに、先生とジュール先生は仲がよさそうだったので。」

困惑するアスランを気にも留めないでレイは淡々と続けた。
あの写真のことをまったく知らないような口調で。

あぁ、イザークが休みなことも知ってたのか。と、アスランは苦笑するとレイに答えた。
ちゃんと、呼び名を変えて。

「ジュール先生にとっても大切な人だったんだ。まぁ、その日俺たちは会ってないけどな。」
「そうなんですか。わざわざ、すみませんでした。」
「いや、君たちにもその日は迷惑かけたし。」
「いえ、気にしないで下さい。」

そういうと、レイは頭を下げてから、下足へといった。
シンも急いで、頭を下げて、レイを追う。
取り残されたアスランは、不思議そうに下足へ向かう二人を見ていた。





「お前、何聞いてんだよ!」

シンは、レイの後追いかけた。

「俺が聞かなかったら、お前はあそこで話を終わりにしてたろ?」
「そりゃそうだけど・・。」

だからって、あれはいいものなのか?と、シンが言い返そうとするとレイが遮った。

「あの日、先生達会ってなかったんだな。」
「・・・ぇ?」

あいまいなセリフだったので、中途半端な返事をしてしまった。
シンはもう一度頼むとレイのほうを見た。

「先生もジュール先生も共通の友人のお墓参りだったのに、お互い顔合わせてないみたいだし。」
「あぁ。何でだろうな。でも、どうでもいいだろ?だいたい、行った日が違うかもしれないし。
忙しかったんだろ?まっ、どうでもいいじゃん。一緒にいなかったわけだし。」
「あぁ・・」

レイは納得がいかないのか不服そうだったが、シンは楽観的だった。
シンにとっては、アスランとイザークが休暇中に一緒にいなかったという事実だけで十分だった。



たとえ、その友人と呼ばれる人物がふたりにとって、特別な存在であろうと。
その人物は亡くなってしまっているのだ。
自分たちは今を生きているが、その人物が自分たちの前に現れることは無い。
その人物が自分の恋に何か影響をもたらすとは、今のシンには考えられなかった。






 

 

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