| PartT 03. 準備は滞りなく進んでいった。 シンたちの予想通り、笑いに走ったのは1組だけだったらしい。 他クラスも漫才やそういう類の案はあったが、どちらかというとゲーム類の方が多かった。 体を張ったものから、頭使うものまで、クラスの個性がよく現れていた。 「えっと、一次案は無事通ったんで、最終案をまとめます。 一応、一次案にメニューとかを追加するのと、どんな仮装をするか、 あと必要な物とかまとめるけど、ほとんど今まで出来上がってたんで、 こっちは俺とレイのほうで仕上げます。」 1組は一次案が出来上がった時点で、ほとんど話は進んでいた。 メニューやその他のことも大体決まってきていたのである。 ホームルームや終礼であがっていたメニューをまとめ、 道具などで必要な物を書き出すぐらいで終りそうであった。 「じゃ、担当ごとに作業にとりかかってください。 随時、必要なものとかわからないことがあったら俺に聞いてください。」 シンが言い終わると皆、もともと割り振ってあった担当ごとに作業に取りかかる。 内装関係、飲食関係、衣装関係と、大雑把に分けてあとは個人に任せてあった。 「メニューってこんなもんでいいよな? 用具とかそっち系はまだ内装が決まらないと書けないか。」 「そうだな。内装はこの時間が終ってからでいいだろ。 飲食関係で必要なものはほとんど学校からは借りれないしな。」 「だよなぁ〜。手分けして集めないとな。これについてはまた終礼まで持越しか。」 「そうなるな。」 いつになったら、この書類関係から逃れられるんだろうか・・・。 まだまだ仕事が増え続けるシンは、活字を見るのも嫌になりつつあった。 「シン〜っ。」 レイとシンが今週の予定について話していると、どこかのグループからお呼びがかかる。 「何?」 「これ、女装なんだけどさぁ・・・。」 衣装関係のグループだった。 何人ぐらい女装するのか、衣装は統一したほうがいいのか、 あと姉妹校の涼風女子高の文化祭はいつなのか。 涼風に関しては、女装用の衣装を貸して貰えないかというものだった。 「わかった。それについてはまた終礼でアンケとって、涼風については俺が聞いとく。」 「おう!じゃ、頼むな。」 また、仕事が増えていく。 笑顔で答えながらも、内心溜め息をついてしまうシンだった。 「あっ、ジュール先生っ!」 そのとき、ちょうどいいタイミングでイザークが1組の前を通りかかった。 イザークは、生徒会を担当している。 もちろん実行委員会もイザークが取りしきっていた。 「どうしたんだ?」 クラスをうけもっていないイザークは、 クラスごとの進み具合を見にきていたようだった。 「あの、涼風女子って今年は文化祭いつになったんでしょうか?」 「あぁ、涼風ならちょうどここの1週間後だな。どうかしたのか?」 「クラスで女装するんで、できれば衣装を借りたいなと思って。」 すると、イザークは少し考えて、わかった。と答えた。 そして、担任は誰かと続けた。 「ザラ先生です。」 シンが答えると、アスランか。と小さく呟いてからイザークは話を進めた。 「じゃあ、俺から涼風のほうに聞いてザラ先生に伝えておくから。」 「すみません、お願いします。」 シンが頭を下げると、イザークはそのまま去っていった。 その後姿を見ながら、シンはふと先程イザークが口にした言葉を考えていた。 イザークがアスランのことを名前で呼んでいたこと。 これは、この前にも気付いたことだった。 この前は、アスランがイザークのことを名前で呼んでいた。 イザークに尋ねたこととは全く関係ないことばかりが頭の中を駆け巡る。 二人は親しいんだろうか。 どういう関係なのか。 仲がよい教師同士でも名前で呼び合う教師を見たことがなかったシンにとって、 二人の関係は不思議だった。 二人のうちにアスランが含まれなければ、気にすることもなかったのだろう。 だが、その二人にシンが気になるアスランは含まれているのである。 気にならないわけがなかった。 「シン。」 暫しの間、廊下に立ったまま、シンが考えに耽っていると後ろから声がかけられた。 振り向くとそこにはレイがいた。 「どうしたんだ?」 衣装グループからお呼びがかかってから、一向に戻ってこないシンを、 レイは探していたようだった。 「・・いや、何でもない。ちょっと用事があってジュール先生に聞いてただけ。」 「なら、さっさと仕上げるぞ。」 「わかった。今行く。」 シンは、何も無かったように教室に戻った。 クラスに戻ると、先程のもやもやしたものもすぐに気にならなくなった。 一方レイは、少し様子のおかしいように見えたシンを目で追いながら、 自らも教室へと戻った。 + + + 「衣装、数足りてる?ちゃんと涼風のと分けとけよ。」 「ビラここ置いとくぞ〜。」 「机と椅子の数ってこんなもんで大丈夫だよな。」 「内装もこんなもんかな?」 最終確認が各グループで行われる。 いよいよ明日が本番だった。 「みんな、終ったか?終ったら明日の連絡するぞ。」 シンが教室の真ん中に立ち、指揮をとる。 「明日は、体育館で8時半から式。調理担当者は9時頃から抜けて調理を始めて大丈夫だから。 一応、式中にも連絡があるはずです。他の人は先生の指示にしたがってください。 ただ、式が終ってすぐ文化祭がスタートします。 だから、準備のために8時には教室に全員来ておいてください。」 要点だけ述べると、あとは質問がないか尋ねてからシンは戻り、 アスランが前に立った。 「いよいよ明日だ。まず、1枚賞状をもぎ取りに行こう。」 そう笑ってアスランがいうと、皆もそれぞれ声を上げて、士気を高めた。 明日は、ついに本番だ。 |