| PartU 04. 「やっぱりここに来てたんだな。」 イザークが去ったあと、珍しい客がそこに来た。 「お前こそ、珍しいな。」 金髪の男は沈みかている太陽を眺めながらいった。 「いや、もしかしたら・・と思って。でも、イザークはいないみたいだな。」 「あぁ、あいつなら俺が怒らして帰らしちまった。悪いな。」 「別に気にしなくていいさ。俺も彼に会いに来たわけじゃないから。」 「ならよかったぜ。・・・隣座るか?」 ディアッカはそういうと、少し自分が座っていた場所を動いて、もう一人座れるようにした。 悪いな。と、アスランも腰を下ろす。 あんなに青かった空はいつの間にか、西に沈んでいく太陽に紅く染められている。 「イザークもう発つんだよな。」 「明日だな。」 「そうか・・・、上手くいくといいけど。」 「そうだな。」 ポツポツと呟くような会話。 お互いにもうすぐ日本を発つであろう友人に想いを馳せていた。 「なんか、懐かしいな。」 この感じ。とアスランが言った。 昔、まだリリィがいたころ。 二人はこうして話しながらイザークとリリィに帰りを待っていた。 「最近、こんな時間なかったもんな。」 「あぁ。」 二人が帰ってくるのを待ちながら、いろいろな話をした。 たとえば、音楽の話や大学の話。 そして、想いを寄せる人物の話。 「いろんなこと、話したよな。」 「そうだな・・・。ある意味、俺たちが一番互いのこと理解し合ってたのかもしれないな。」 リリィの家の広い庭の一角に置かれたベンチに座りながら 話していたころのことを思い出す。 イザークやリリィに話せないことでも、二人の間では話せる事もあったのだ。 「懐かしいな・・・。」 「あぁ。」 + + + リリィが倒れる数ヶ月前。 アスランがディアッカたちとともに過ごすようになってから、 もう少しで2年が経とうとしていた5月のことだった。 「お前って、イザークのこと好きだろ?」 それは、とても突然だった。 「ぇ・・・?」 アスランは、ディアッカの言ったことに動揺を隠せなかった。 自分では、そんな態度をした覚えも無かったし、ディアッカに言った覚えもなかったからだ。 「お前のこと見てたらわかるんだよ。」 「どう意味?」 ディアッカはいつもリリィが座っている場所を見つめながら言った。 「俺と同じ瞳をしながら、あいつのこと見てるんだよ。」 「・・・同じ瞳?」 「そう、同じ瞳をして、見てるんだよ。」 そういいながら、ディアッカは自嘲するように笑った。 「俺とってことは、ディアッカもそういう瞳をしてるのか?」 「そういうことになるな。」 アスランの問いに関して答えても、ディアッカの視線は 先ほどの場所から動くことはなかった。 「もしかして・・・。」 アスランが、ディアッカの視線の先に気付いて、何か言おうとしたとき、ディアッカが遮った。 「やっと気付いたか。まっ、俺も気付かれないように頑張ってるけどな。」 「でも・・・。」 リリィの婚約者はイザークだということ続けようとして、アスランは口ごもった。 だが、ディアッカはその後に続くであろう言葉を理解していたようだった。 「そっ。あいつの婚約者は、俺たちの仲間でもあるイザーク。俺の親友だな。」 だからこそ、言えない、伝えられない。 本当なら、真っ先に伝えるべき相手であるはずなのに。 「・・・辛くないのか?」 アスランはディアッカの瞳を見ることができず、同じ方向を向いたまま喋った。 まるで、自分に問いかけるように。 「それは、お互い様だろ?・・・ある意味、お前のほうが辛いんじゃないのか?」 ディアッカも同じく視線を逸らさずにいった。 互いの視線は交わることなく、ただ、彼女と彼が座るであろう場所を見つめている。 ある意味。というのは、実のところアスランにとって一番の問題でもあることだった。 "男" それが、何よりもこの恋を人には言えないものにしてしまっていた。 例えば、イザークがホモまたはバイであることがわかっていたら こんなに悩まなかったんだろうが。 昔ほど偏見がない世の中にはなったが、知り合い同士では話が違うものだろう。 ましてや、相手には女性の婚約者がいる。 「・・・辛くないわけないよな。」 静かに過ぎていく時の流れを、紅く染まる空に感じながら、 二人が来るまでの時間を穏やかに過ごしていた。 |