| PartU 05. 「・・・どうした?」 並んで座ったまま、喋らなくなったアスランに、ディアッカが問いかけた。 「・・・いや。そんなこともあったんだなって。」 「何言ってんだ?」 何でもないよ。とアスランは空を見上げた。 そこには、あの日と変わらない紅く染まる空があった。 「あれから、もう5年以上経つんだよな。」 「そうだな。」 「結局、俺たち何か変わったのか?」 「さぁな。変わったこともあるだろうし、そうじゃないところもあるだろうな。」 「変わること、変わらないこと。どっちがいいんだろうな。」 「どっちがいいんだろうな・・。」 二人して、出ぬ答えに想いを馳せていた。 変わらぬ想いは、いつもそこに在るのに、変わり続ける自らは、常にそこに在ることもできないのだから。 暫しの沈黙のあと、ディアッカが言った。 「・・・時々、考えるんだ。」 それは、隣にいるアスランに話しかけるというよりは、自らに話しかけるようなものだった。 「時々・・・、もし、俺がリリィの恋人で、婚約者ならっどうだったろうって。」 愛する者の最愛の人は自分ではなく、自分の親友である人物なのだ。 もしも、その代わりが自分であったならと、考えないものはいるのだろうか。 「そしたら、イザークに苛ついて、あいつが羨ましくなる。」 アスランは、その言葉になんとなく共感できた。 「あいつの真摯過ぎるリリィへの想いにさぁ・・・。」 もし、自分がその立場にいた場合、 自分は彼と同じように彼女のことを愛し続けることができたのだろうかと。 何年も経つのに、その想いは色褪せることも知らず、変わらずに彼の心の中に在り続けるのだ。 「誰も・・・、代わりにはなれないし、代わる必要もないんだろ、結局は。」 そう、結局は誰も代わりになることはできないし、代わりになる必要も無いのだ。 求めているのは、代わりの立場ではなく、"唯一"の立場なのだから。 「わかってるんだけどな。」 わかっているからこそ、言葉にせずにはいられないのだ。 どれだけ悩んで頭で考えたって、結局行き着く答えはひとつしかないのだ。 "自分が誰を好きなのか" ディアッカがリリィを好きなように、アスランもまた、イザークが好きなのだ。 そして、そのイザークもリリィのことが好きなのだ。 「うまくいかないな。」 「あぁ。」 夏は、もう少し、二人が思い出に浸る時間を与えてくれるようだった。 + + + 「・・・冷えてきたな。」 いくら夏とはいえ、夜になるとまだ冷える。 紅く染まっていた空は、ゆっくりと夜の帳がおりてきていた。 「もう、帰るか。」 二人は、あれから会話を楽しむというよりは、 その二人でいる雰囲気に浸るように、それぞれにあの頃の思い出に浸っていた。 「あぁ。」 「んじゃ、先に行くな。」 そういって、ディアッカは先に行ってしまった。 アスランは一人その場所に取り残されてた。 誰もいないその場所は、昼間とは違いとても寂しげな表情をしている。 まるで、自分のようだとアスランは思った。 ディアッカと深い話をするようになったのは、リリィが亡くなる数ヶ月前のことだった。 他愛も無い世間話に少しだけ混じる心の深い処の想い。 それは今も変わることは無かった。 「もし、自分が・・・・、か。」 もし、自分がリリィの代わりになれたら・・・。 あの立場に、イザークから無条件に愛される立場に、 もし自分が立つことを許されたとしても彼は同じ様に愛してくれるのだろうか。 「何回、考えたんだろうな。」 結局、自分は何処の位置に立っても、愛する人は彼しかいないのだ。 そして、たぶん代わりになれたとしても、イザークの想いは自分に向くことは無いだろう。 「代わりじゃ、駄目なんだよ。」 その言葉は、誰もいないこの場所に、吸い込まれるようにして消えていった。 (代わりじゃ、駄目なんだ。代わりじゃ・・・・。) アスランは、何度も心の中でその言葉を噛み締めるように呟いた。 |