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PartV 04. それからの二週間は短いようでとても長かった。 イザークの傍らを通る生徒は、時々「おめでとうございます。」 「淋しくなります。」と、イザークに声をかけた。 それは、イザークとの別れが近づいてきたこと否応無しに感じさせた。 臨時の集会の後もアスランは全く変わりないように周りからは見えた。 だが、アスランを毎日見つめている者からしてみれば、 違って見えるのが当たり前だった。 あれからアスランの行動におかしな所はなかった。 だが、所々変わっていることが確かにあったのだ。 特に、窓の外を見ることが多くなったとシンは感じていた。 偶然、シンが職員室の前を通るとアスランは誰もいない窓際で、ずっと空を見上げていた。 とても切なそうに、淋しそうに。 (やっぱり淋しいんだな・・・) なんとなくシンはそう思って、話しかけるのを止め、その場を去った。 その頃、アスランは頭の中で昨日の電話の内容を思い返していた。 「イザーク、行くんだな。」 「あぁ。嬉しいけど、やっぱ淋しいよな。」 「当分は会えそうにもないからな。」 「そうだな。落ち着いたら落ち着いたであっちに住むわけだし。」 「なぁ、俺どうしたらいいんだろ?」 少し間をおいて、アスランは言った。 自然と声が小さくなる。 「どうって?」 「彼が日本からいなくなるだろ?じゃあ、俺はこの気持ちをどうすればいいんだろってな。」 伝えるべきなのか、そうでないのか。 「伝えたらいいだろう。」 ディアッカから返ってきた答えは、わかっていても、簡単には踏み出せない場所にあるものだった。 「そんなに簡単に出来たら苦労しないよ。 イザークはいろいろなことを整理してあっちに行くつもりなんだろ?」 (たぶん、リリィのことも・・・。) 「そこに俺なんかが気持ちを伝えてめちゃくちゃにしたくもないし。 だいたい、イザークがリリィのことを・・・」 「リリィのことを?」 「簡単に想い出にすることなんて・・・・、できるわけがない。」 たぶん、イザークはリリィを愛し続けるだろう。 アスランの入る隙間なんてそこにはないのかもしれない。 たとえ、イザークが他の世界を見に行こうとしても、そこに自分はいないと、アスランは考えていた。 「それは、お前だって俺だって変わらないだろ? 俺だって、あいつのことを想い出になんかにできねぇよ。」 ディアッカもイザークと同じようにリリィを愛していたのだ。 けして、実らない想いだったが、ずっと今もリリィを愛し続けている。 それは、アスランやイザークがリリィを想うよりも、ずっと純粋にあの頃のまま。 「ごめん、俺・・・。」 「気にするなよ。お前だって同じなんだからさ。」 「あぁ・・・。」 「じゃ、明日早いから。」 「悪い、急に電話かけて。」 「いいって。気にするなよ。じゃ、またな。」 「あぁ、おやすみ。」 アスランが通話を切ろうとするとディアッカが何か言った。 ――もし、純粋に自分の事を想ってくれる奴がいるなら、変われるのかもしれないな。 それはアスラン対して言った言葉なのか、それとも自分に言ったの言葉なのか。 アスランは、返事を返すことなく電話を切った。 「本当に、変われるんだろうか・・?」 本当にそれだけで変われるのだろうか。 自分は変えることができるんだろうか。 こんな想いひとつで。 本当に・・・。 「はぁ・・・。」 秋晴れの空に、溜め息がひとつ。 頭の中を駆ける考えに、答えは出るのだろうか。 今まで離れてもすぐ会いに行こうと思えば会いに行ける距離に居た。 だが、今回はそうもいかないようだった。 どうして、あの時は何も感じなかったんだろうか。 イザークが近い内にアメリカにいくことは、あの時解っていたはずだったのだ。 あの時、自分は何を考えていたのだろうか。 アスランは、初めてイザークがアメリカに行こうと考えていることを知ったとき、 自分が何を考えていたのか、何を思っていたのか、何も思い出せなかった。 「どうするかな・・・。」 伝えるべきときが来たのは、アスラン自身もよくわかっていた。 さすがに、今までとは状況も違っていることも。 あと、二週間。 イザークが日本を発つまでに、何か変われるんだろうか。 空に描かれる1本の飛行機雲に、自分とイザークを重ねてしまうアスランがいた。 "友人" "恋人" 自分がその中央に描かれた境界線を越えることができるのか、アスランには自信がなかった。 自分が何を求めているのかさえも・・・。 |