PartV 06.



――俺さ、先生に告白しようと思う。





レイは、赤く色付く空を見ながら、今日一日のことを考えていた。



こうなることは、最初から解っていたことだった。
自分がああいうことを言えば、シンがどんな行動に出るかということなど、
レイには容易に想像できていた。


シンが、自分の気持ちを伝えずに、中途半端なまま諦めることができないことくらい
レイには十分にわかっていた。
だからこそ、レイはその最後の一歩を踏み出すために、背中を押してやったのだ。
それは、自分にか出来ないことだということを、レイは誰よりも理解していたのだから。


(結局、こうなってしまうんだな・・。)


解りきっていることでも、やはり辛いものは辛いのだ。
自分が大切に想っている者が、他の者に告白するなんて考えたくもない現実だった。
このまま振られて自分のもとに帰ってこればいいなんて、
最低なことを考えてしまう自分自身に、レイは自嘲するしかなかった。



傷つく必要などシンにはないのだ。

なのに、シンはわざわざ自ら苦しい道を歩んでいく。

本気になる前に、諦めてしまえばよかったのだ。
こんな辛い想いをするくらいなら、諦めてしまったほうが・・・。


(って、俺にそんなこと言う権利はないか・・・。)


レイは、苦笑した。


結局、自分はシンが告白するように背中を押したのだ。
心で何を考えようとも、レイはシンを応援していた・・いや、そういう振りをしていたのだ。
絶対になどということは、ないかもしれないが、シンの想いが成就することがないことは
シンにアスランの様子を聞いたときに、ある程度予想できてしまっていた。



シンからアスランのことを聞かされたレイは、自分でも意識的に二人の行動を見ていたのだ。
シンの行動に日ごろから気をつけることは、今に始まったことではないが、
アスランにも自然と目が行くようになっていた。

「観察」

この言葉が一番的を得ているだろう。
レイは、シンが自分の想いに気付きだしてから、ずっと観察していたのだ。
それは、客観的に二人のことを把握するためだったのか、
それとも、シンの想いが確実に実らないことを確認するためだったのか、
レイは、自分でそこを追求しようとは思わなかった。
ただ、二人の姿を枠の外からずっと見ていたのだ。





例えば、誰かに。


『シンが振られるということが解っていて背中を押したのか?』


と聞かれれば、レイは「そうだ。」と答えるだろう。
だが、そうするしかなかったのも事実なのだ。
もし、自分がそのことを知っていて、シンの背中を押さなかったら、
後悔するのは、シンだけではなくレイも同じなのだ。
その行動をとらなかった自分よりも、目の前で、
そのことを悔やんでいるシンをみることのほうがレイには辛かった。





俺は、狡い。





この関係が崩れてしまうことを怖れて、気持ちを伝えることすらしない。
ただ、あいつの傍にいられるように。
あいつの最高の友を偽って。





俺は、狡い。





あいつの恋を応援しているようで、心の奥底では失敗することを祈っている。
そして、傷ついて俺を求めればいいなんて。





(裏切ってるよな・・。)





だけど、一番に考えているのはお前の幸せなんだ、シン・・。





自分から新しい道を切り開いていこうとするシンを見ながら、レイは羨ましいと思った。
自分は、結局待つことしかできないのだから。


シンが振られようとも、受け入れられようとも、
レイはずっと待つことしかできないのだ。
自分からこの関係に終止符を打つ勇気など、持ち合わせてはいなかった。





「好きなんだ・・・。」





これだけは、紛れもない真実。
偽りで塗り固められたような言葉の中でも、これだけは違うのだ。



大切で大切で・・・。


シンを愛している。



この想いが伝えられる日は来るのだろうか・・。
レイは、小さく息を吐きながら、流れていく雲を見ていた。





部屋の窓から見える空は、いつの間にか深い藍色に包まれていた。











 

 

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