| PartW 09. 式は予定通り滞りなく進んでいく。 校長の挨拶。 イザークの挨拶。 花束の贈呈。 別れを惜しむ拍手の中、彼は体育館を後にした。 明日から彼はここに居ない。 + + + 何も変わらない。 それは、良いことなのか。 それとも、悪いことなのか。 シンには、どちらなのかよくわからなかった。 だが、変わらなければ始まることもないことだけは、わかっていた。 (どうしたいんだ・・・) アスランの表情はいつもと変わらないようだった。 予め、こうして過ごそうと決めていたように、表情に変化がない。 見つめる先に居る人物も、変わらない。 明日、イザークが日本を発つことは、誰もが知っていった。 なのに、何も変えようとしないアスランの姿に、シンは苛立ちを隠せない。 (このままで、いいはずなんかないのに・・・) 何も変わらずに居ることが、アスランにとって最善なのかどうか、 シンに分かるはずもないが、このまま何も変わらないことを、 シンは許せそうにもなかった。 自分の気持ちをシンはアスランに伝えた。 断られたが、断られるのもわかっていたが、伝えた。 アスランが何に囚われているのか知らない。 (けど、逃げるなんて狡い。) そして、何よりも・・・。 (あんな表情の先生は見ていたくない!) 切なそうにイザークの姿を目で追うアスランを、シンは見ていたくなかった。 「ちょっと行ってくる。ごめん、先に帰ってて。」 シンは、勢いよく立ち上がった。 「おいっ!シンっ!」 急に教室を飛び出していくシンに、レイは声をかける。 だが、その声を振り払うように、シンは走っていった。 「ったく・・。」 小さく溜め息をつく。 シンが目指しているところは、レイにも分かっていた。 (どうしようもないな・・・) 辛い想いをするのは、目に見えている。 だが、行かずにはいれないのだろう。 自分に振り向いて欲しいのに、振り向いてくれない相手。 それでも、幸せになって欲しい。 まとまらない想いに、どうしようもなくて、自分がわからなくて。 "好きだから" この想いだけが、シンを走らせる。 (どうしようもないのは、俺なんだよな・・・) レイはそんなシンの姿を見ながら、羨ましいとしか思えない自分が少し切なくなった。 (変わらないと・・・か。) 窓の外に見える走るシンの姿を見ながら、ふとレイは考えてみようと思った。 自分がこれからどうするのかどうしたいのか、を。 + + + 「先生、ちょっとお時間ありますか?」 職員室に入るなり、アスランを見つけるとシンは言った。 アスランもシンの雰囲気に驚きながらも、ともに職員室を出て生徒指導室に向かう。 外は、止んでいた雨がまた降り出していた。 |