PartX 03.


雨音が職員室に響く。
いつの間にか誰も居なくなったその場所には、静かに刻だけが流れていた。










「3時か・・・」

時計を確かめて、一つ溜め息をつく。
アスランは、まだ気持ちの整理がつかず、この場所を動けずに居た。


“ 好き ”


この想いだけを純粋に考えることが出来ない。
だが、イザークはあと数時間で日本から飛び発ってしまう。
今までのように、彼に逢うことは出来なくなるのだ。


(彼が居なくなる、か・・・。)


改めて考える、イザークが居ない日常を。
それは、彩を無くした世界と同じ。
光の無い真っ暗な闇の中に一人取り残されたような、例えばそんな感じだろうか。

不意に、そんなことを思いついた自分に、アスランは小さく笑った。
まるで少女マンガに出てくる主人公のような考えである。
けれども、アスランの置かれている状況は、それとさして変わらないのかも知れない。
話の佳境、一番の山場、まさにそういった状況だ。
こんなとき、主人公のすることは決まっている。


(もちろん、追いかけるよな。)


追いかけなければ、決して二人は結ばれない。
後に残るものは、自分への後悔と大切な人への切ない想いだけだ。
だが、追いかければ、何かが変わるかもしれない。
結ばれはしなくても、何か・・・、そう何かが新しい世界を開いてくれる。


(俺は、何を迷っているんだろう。)


出逢ってからイザークとアスランが離れていた期間は僅かなもので、
連絡を取りさえすれば、すぐに逢うことが出来ていた。
そして、今はこうして毎日のように顔を合わし、言葉を交わしている。
常に、光は共に在ったのだ。

このままイザークが日本を離れてしまえば、この日常は終わりを告げる。
アスランが怖れていた『関係が崩れる』ということも少なからず起こってしまうだろう。
どちらにしろ、アスランが望む『今のまま』を継続することは出来ないのだ。
あとは、自分から動いてこの関係を、いい意味でも悪い意味でも打破するのか。
変わっていくこの関係に、何もせず指を咥えたまま涙を流すのか。
自分自身で選択するだけだった。


(バカだ・・・。)


最初から答えなど決まっているのに、何故ここまで躊躇する必要があったのだろうか。
光の無い闇の中で、自分がどうなってしまうかなど、容易く想像出来た。


(生きていくなんてムリだよな・・・。)


そんな自分に、アスランは苦笑した。
そして、ゆっくりとした動作で手に持ったままの写真に目を向けた。







『あなたって・・・、イザークのこと好きなんでしょう?』


彼女の言葉に、今なら笑顔で答えることが出来そうだった。
彼の言葉にもまた。


『好きなんでしょ?先生・・・。』






イザークが好きだ。


イザークを愛している。





それがすべてだった。
この想いは止められない。







「やっと、伝えられそうだ。」

変わらずに微笑みかける彼女に、アスランは小さく呟いた。
時計を見ると、時計の針は4時15分前を指している。
イザークの乗る飛行機は、6時の便。
ここから、空港までは約1時間弱。
ぐずぐずしている時間はなかった。






 

 

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