| PartX 04. 雨は、次第に雨脚を弱めていく。 雲間から薄っすらと光が差し込んでいた。 シンとレイは、職員室に部室の鍵を返しに行くところだった。 「明日の課題やったか?」 「あれなら、既に終わってる。」 「じゃ、っ・・・。」 「見せない。」 「誰も、んなこと言ってないだろ。お前の解答を参考にしようと・・・。」 「結局、自分でしないで写すんだろ?わかりきってて貸せるわけがない。」 「ケチ。」 あからさまに不満だと頬を膨らますシンに、レイは笑いながら前を歩く。 シンもそんなレイに、ぶつぶつと文句を呟きながらその背を追った。 「ほら、開けるぞ。」 レイの言葉に文句を言うのを止めると、シンも彼の隣に並ぶ。 「「失礼します。」」 声を揃えて、扉を開ける。 それと同時に、もう一つの扉から慌しく出て行く音がした。 「先生っ!?」 シンがアスランの姿を捉えると、アスランも驚いたようにシンを見つめた。 「どうかしたんですか?」 シンが何事かと尋ねたが、シンの声はアスランには届いてはおらず、 彼は軽く二人に微笑むと、そのまま階段を駆け下りて行った。 意味がわからず、シンはレイのほうを振り向いたが、 彼も何が起こっているのか良くわかっていないようで、同じような瞳でシンを見返した。 だが、すぐその視線は彼の走り去った階段へと向けられた。 そこから、彼の声が聞こえたからだ。 「シンっ!」 後ろを振り返れば、階段の途中で二人を見上げるアスランが居た。 そして、何かを伝えると、先ほどと同じ様に階段を駆け下りた。 「ありえねぇ・・・。」 シンは、アスランが走り去ったその場所を見つめながら、小さく声を漏らした。 “ありがとう” アスランは確かにそう言った。 声に出すことは無かったが、唇の動きはその五文字を刻んでいた。 + + + 暫くの間、シンはアスランが去っていった階段を見つめていた。 レイも言葉をかけることをせず、静かに職員室に入り部室の鍵を元の場所へと戻した。 (今、向かっているのか。) シンの後姿を眺めながら、レイは彼の行動の意味を考える。 アスランがイザークを好きであることは、もちろん知っていた。 そして、その気持ちを伝えようとしていなかったことも。 だが、先程のアスランの様子は、今迄のアスランとは違うことにレイも気付いていた。 何か吹っ切れたような、そんな感じがした。 (ありがとう・・・か。) 優しい微笑みとともに紡がれた言葉に、心が締め付けられる者がいることを 彼は気付いているんだろうか。 「・・・シン。」 レイは、小刻みに震えるシンの肩を強く抱き寄せながら向きを変えた。 「ちょっと教室に寄ってもいいか?」 驚いてレイを見上げるシンに、悪い。と軽く頭を下げながら前へと促す。 シンも自分のことを気遣ってのことだと気付くと、バツが悪そうに頷いた。 |