PartX 05.


「もしもし、ディアッカ?・・・俺だけど。」
『アスランか?どうした?』
「今、空港に向かってる。」
『そっか。』
「やっと、伝えられる。」
『あぁ。』
「いろいろありがとう。」
『いや、気にするなよ。』
「また、連絡する。」



携帯を閉じながら、アスランは窓の外を見上げる。
雲に覆われた灰色の空は、徐々に明るくなり始めていた。

(ありがとう。)

改めて、心の中で感謝の言葉を紡いだ。
彼には、何度この言葉を口にしても足りないだろう。
それほど、ディアッカには助けてもらっていた。
今も、昔も、あの頃からずっと。
あと一歩を踏み出せずにいるアスランの背中を、力強く押してくれたのはディアッカだった。
同じ想いを共有できた唯一の友人。
大切な、大切な、仲間。

「・・・ありがとう。」

もう一度、小さく声にした。










タクシーの中。
心臓は早鐘のように鳴るのかと思えば、アスラン自身も驚くほど落ち着いていた。
何を伝えればいいのか、どのように話し出せばいいのか。
本当ならば、いろいろと考えておかなければいけないこともあるのだろう。
だが、アスランにとって『イザークに伝える』ということを行動に起こすことが、一番難しかったのだ。
それが行動に起こせた今、ある意味他のことは、些細なものにしか感じられないのかもしれない。
伝えることなど、ずっと前から決まっている。
それをいろいろな言葉で飾り立てる必要など無い。
一言。そう、たった一言、伝えられれば良いのだ。

(あと、5分・・・。)

空港までの時間を気にしながらも、アスランの瞳は真っ直ぐに前を見据えていた。
もう、恐れはしない。
アスランが何もせずとも、イザークが日本を離れずとも、この関係は、いずれ形を変える。
それは、遅かれ早かれ、遠くない未来に起こることなのだ。

(早く、君に逢いたいよ。)

この想いを押し付けようとは思わない。
聞いて欲しいだけ。
自分がイザークを想っていることを知っていて欲しいだけ。

これだけでも、十分我が儘だと言われるかもしれない。
それでも、自分の気持ちを知った上で、イザークに許してもらいたかったのだ。

イザークの傍にいることを。
イザークを想い続けることを。





「リリィ・・・、伝えてくるよ。」





 + + +





「おっ、止んだかな?」

ディアッカは、差していた傘を畳んだ。
空を見上げると、徐々に青空が見え始めている。

「頑張って来いよ。こいつも応援してるから、なっ。」

そう言って、ディアッカは目の前の十字架に、微笑みかけた。
その微笑みに答えるように、優しく風が吹いた。





空が晴れるまで、そう時間はかからないだろう。








 

 

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